わたしがパン焼きをはじめたのは、約10年前。生まれた息子に安全なパンを食べさせたかったから。

それまでのわたしは、実はパンが好きではありませんでした。好んで食べるのはバゲットくらい。給食の食パンは天敵。

当時は、電子レンジに搭載されたちょっとしたオーブン機能で、市販のドライイーストを使って焼くことからはじまったけれど、なんだかぜーんぜんうまく焼けなくて断念。

その2年後、双子を妊娠中にふと、「自分で酵母を起こしてパンを焼いてみよう」と思い立ち、本を見ながら酵母起こしに取り組むも、どんな状態が発酵?これってもしかして腐敗の方?どの程度がどうなの?と、???ばかり。近所に暮らす酵母の魔女に助けをもらい、アドバイスをもらいながら、いろんな果物や素材を使って酵母を起こし、パンを焼いてみる生活がはじまった。当時は何かに取り憑かれたようにいろんな実験を繰り返していて、それはもうまるでマッドサイエンティスト。それは今も変わらないかもしれないけれど。笑

その後紆余曲折を経て、家族や友人のためにいろんな酵母を使ってパンを焼き、子育てに追われながらも、なにかを形にしたくて(今思えば、母、主婦としてでない自分を表現して社会的な存在意義を得たくてがむしゃらだったように思う。)パン屋をはじめるに至りました。いろいろ試した末、量産しやすいお気に入りに白神こだま酵母を使ってのパン屋です。

そしてこのコロナ禍で、生活のいろんな面を見直したり、ダウンシフトしている現在、パン屋の形も、パワー全開どなたでもどうぞのスタイルから、必要としてくれる人にもれなく渡したい(これも、はじめた当初はそんな気持ちだったな〜と思い出し。)という気持ちが強くなり、予約注文制という形で細々とひっそりとパン屋は続けているわけなのですが、なかなか思うように材料が入手できなかったり、高騰したり。それがついに!パンの肝心要の酵母にまで影響が出ていることに気がつき、それはもう、わたしの中ではやってらんないくらいの値段になっていて、こちらもまた原点に帰って自家製酵母の研究を再開してみることにしました。

もうすっかり忘れている酵母起こし。ダウンシフトしている今のうちに、酵母起こしにはもってこいの温度の季節に、またいろいろやってみます。白神こだま酵母のパンに負けないくらい美味しいパンが焼けるように、マッドサイエンティスト復活です。ワクワク。

このコロナ禍は、それまでの自分のワクワクやときめきや、大事にしたいことを思い出させてくれる、そんな時代のように感じます。

お目見えする日は来るのでしょうか。

これからのわたしの古くて新しい試みです。

今日は、ご注文をいただいたメッセージを込めたパンたちが旅立って行きました。それぞれの食卓での笑顔のおともになりますように。